2018年 11月 03日 ( 1 )

アルパインガイド谷5年間の軌跡

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こんにちは、ヤムナスカガイドの堀口です!皆さん日本の秋山を楽しんでいますか?こちらカナダでは秋も深まり冬はすぐそこ。そろそろ私たちはスキーやアイスクライミングなど、冬のアクティビティのギアの準備を始めようかというところです!

さて、今回は我々にとってとても嬉しいニュースをお届けします!
この夏にガイドの谷剛士がACMG(カナダ山岳ガイド協会)の超難関のアルパインガイド試験を突破し、ヤムナスカで唯一のアルパインガイド(山岳登攀ガイド)となりました!!

そこで、今回は谷のアルパインガイド資格取得までのステップを、彼の軌跡と共にご紹介します。
私と谷はACMGアプレンティス・ハイキングガイド資格の受講時からの同期で、実は同い年なのです!共に山を舞台に仕事をしながら、彼の生き様(笑)見てきたつもりです。今回の記事はカナダでガイド付きのアルパインガイドに興味がある方はもちろんですが、今後カナダでアルパインガイドを目指したい方が参考にしてもらえれば嬉しいです。

そもそも『アルパインガイド』とは一体どのようなガイドが出来る資格なのか?まずはここからご案内しましょう!

例えば下の写真のような、、

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このような氷河のある地形や高所の岩場、


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垂直の氷瀑を登るアイスクライミング
(クライマー:谷)

このように、夏山、冬山共に高所での岩場、氷壁、雪または氷河の地形をガイディングできるのがアルパインガイドとなります。
もちろんロープ、ハーネス、クランポン(アイゼン)、アックス(ピッケル)等のクライミングギアを用いての登攀、登山です。

特にアイスクライミングの場合、カナディアンロッキーは聖地として知られており、我々ヤムナスカの拠点があるBow Valleyは、とにかくアプローチがとても便利!駐車場に車を停めてたった10分、15分のアプローチで壁に取り付きできるような場所がゴロゴロしており、正にアイスクライマー天国と言っても過言ではないでしょう。

そして、谷は日本人で唯一カナダでこのような地形の山を案内できるガイドとなったのです。

カナディアンロッキーのアルパインエリア(高山帯)はどこへ行っても絶景ですが、何と言っても写真の様にエクストリームな地形が多くなります。そのため安全確保は最大のポイント。従って、ガイド自身体力があることはもちろんですが、安全を確保するための技術と知識も日ごろから磨いておく必要があり、並みの努力でできることではありません。

しかし、山のピークに達したとき、目標のルートを完登したときの達成感は何事にも変え難く、そんな感動をゲストにも味わってもらいたい。そんな気持があるからこそ、試験を積み重ねるモチベーションになるのではないでしょうか。

さあ、それではここからはアルパインガイドになるまでの道のりが如何に険しいのかをご説明します。
下の図をご覧ください。

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ACMG(カナダ山岳ガイド協会)ではこの項目の一つ一つがコース(Training は試験ではないが履修必須)となっていて、一番下までたどり着くとマウンテンガイド(国際山岳ガイド)です!(私はこの表を見ただけで気が遠くなったりますがw)

アルパインガイドになる為には、
・ガイドトレーニング・ロック
・アプレンティス・ロックガイド
・ガイドトレーニング・アルパイン
・アプレンティス・アルパインガイド
・アルパインガイド
と6つものコースを受ける必要があるのです。さらにこの表には記載されていませんが、雪崩大国であるカナダではアルパインガイドになる為にCAA(Canadian Avalanche Association)の
アバランチ・オペレーションズ・レベル 1
という試験にパスする必要があります。あとはもちろんすべてのACMGガイドに求められる
・Advanced Wilderness First Aid(上級野外救命士)※3年に1度の更新あり
こちらも必須です。

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ちなみに谷はこのほかに
・アプレンティス・スキーガイド
アバランチ・オペレーションズ・レベル 2
も取得しており、マウンテンガイドまであと一つとしています。

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ハフナー・キャニオン クートニー国立公園 ブリティッシュコロンビア州
(クライマー:谷)

それでは谷がここまでカナダで取得した資格を順を追って振り返ってみましょう!

さあ、行きましょう!
クライミーング!

2013年春 アドバンスド・ウィルダネス・ファーストエイド・レスポンダー 取得!(私も取っていますが実はこれがかなり大変!?)
2013年夏 ACMG アシスタント・ハイキングガイド Get !
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ほほーう

2014年冬 CAA アバランチ・オペレーションズ・レベル 1 パス!
2014年夏 ACMG アプレンティス・ロックガイド しゃー!!

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ガンバー!!

2015年夏 ACMG アプレンティス・アルパインガイド YES!!
2017年冬 CAA アバランチ・オペレーションズ・レベル 2 うぉりゃー!!

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テイク!!ちょっと一休み
くらいむおーん!!
2018年春 ACMG アプレンティス・スキーガイド HEE HAW!!
2018年秋 ACMG アルパインガイド オーサム!グッジョブ!タク!

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ヒャッホーイ!!

ハァハァハァ・・・何と、1年に1つ以上試験を受けていますね・・・。
ちなみにアプレンティス・ロック、アルパイン、スキーはGuide Training も取る必要がある為、アプレンティスのカテゴリはコースとしては2つ分となるわけです。

これは本当に一年中トレーニングから、プライベートから山に入っていないとできないことです。また、当たり前ですが書類等の手続きからコース中の座学まですべて英語なので、外国人の僕らにとってもこれらのストレスは計り知れません。本当に常に山のことが頭の片隅にないとできないことなのです。さらに谷は非常に計画的に先のことを見据えて、一つずつステップアップしていると言えるでしょう。

そして、それぞれの試験受講前には書類審査から始まり、主に山行履歴を提出する必要があります。場合によってはこれで試験を受けることすらできないということもあり得ます。

冒頭でも述べましたが私はアシスタント・ハイキングガイドの試験は谷と同じ2013年の春に受講しています。ここから谷はマウンテンガイドへの道を歩み始め毎年試験を受けることになるのですが、しかし5年でここまで行くとは・・・。

私が2012年にセメスター(ヤムナスカ登山学校)を受講した時にインストラクターのマウンテンガイドが言っていました。
「カナダでマウンテンガイドになるには最低でも10年はかかる。」
さらにその為には膨大な経験を積む必要があり、「それまでは人生のほとんどを山に捧げることになる」と言っていたのが印象的でした。それ程に厳しい道なのです。

ちなみに私はハイキングガイドを取得してから、ロックやアルパインの道には進まずにハイキングガイドとして経験を積む道を選びました。ガイディングするフィールドは異なりますが、多くの人々にカナダの山を知ってほしいという気持ちは、ハイキングストリームへ進んだヤムナスカのガイドも同じものを持っているのです。また、ガイディングとは別のアプローチ方法で、カナダの山を紹介するチャンスがあることは恵まれたことであると言えます。

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ロープワークは訓練の賜物、形で覚えるのではなく何故こうなるのかを考えることが重要。

夏のシーズン前に行われるガイドが全員揃ってのヤムナスカのスタッフトレーニングでは、毎年異なる山へ入り実際のハイキングを想定し、各ガイドがそれぞれルートプランを持って参加します。そこではオフトレイル(トレイルが付いていないルート)や初見で入る場所も多い為、現場で状況判断することも多くなります。もちろん現場でそのような判断をすることが出来るのが、ACMGハイキングガイドで我々の得意分野でもあるのですが、谷のようなあらゆる地形やハザード(危険になりうる状況)を知っているガイドからの意見は、実に理にかなっており非常に参考になります。

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スタッフトレーニングにて残雪期の雪崩のリスクについて解説
Tryst Lake カナナスキス アルバータ州

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スタッフトレーニングにてハイキングのガイドラインについてディスカッション
Door Jam Mtn. カナナスキス アルバータ州


さて、アルパインガイドへの道のり、そしてその技術は具体的にここではすべて語ることは出来ないのですが、険しく難しいものだと言うことが分かったでしょうか。しかしこの記事で私が伝えたいことは、そんなことではないのです。もちろん彼のここまでの取り組みは桁外れな努力が必要でそれ自体が凄いのですが、彼の本当の凄みとは「山が好き」という当たり前で、半端じゃなく真っ直ぐな気持ちなのではないかと思うのです。

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カナディアンロッキーのアイスクライミングはワールドクラス


2015年4月に谷とヤムナスカガイドの山田がカナディアンロッキーの名峰 Mt. ChephrenのWild thingというルートに第12登※(日本人初登)し戻ってきて、私が「いやぁ凄いね。尊敬するよ!」と谷に声を掛けるとこんな返事が帰ってきました。

谷「まぁ、結局遊びだからねw」

私は驚いたのと同時に、その言葉でハッとし、
「遊びがここまで本気で、、、というかそれこそがガイドが持つべき精神なのでは」と思いました。

本気で遊び、そこで得た感動を少しでも多くの人に伝えたい。
そんな風に思うのは普段意識しないが、もしかすると山でガイドする以上当たり前なのかもしれない。

それから私はそのとき感じたモノを今でも大切にし、今はあのとき谷がそう言った気持ちが分かる様な気がします。

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もちろん我々他のヤムナスカガイドも全員「山が好き」で山で感動し、その感動を伝えられる事を感謝し幸せに感じます。
谷がこのカナディアンロッキーで躍動する姿を見ていると、そこが彼の本当の強みで我々も本来持っているものなんだと気付かされます。

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ボウバレーの日本人クライマー達


今日も谷はどこかで壁に取り付いている事でしょう。どんな絶景を見ていて、何を感じているんでしょうか。
きっと「こんな景色をもっと沢山の人に見せたい!」と思っているに違いないでしょう!

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谷がアルパインガイドとなったことは、今まで想像もできなかった山の世界がより身近になったと言って間違いありません。
言葉の壁が無いことで、より安心して日本の皆さんにカナディアンロッキーが世界に誇る山域である事を、その感動をお伝えできる様になります。
それこそが谷がアルパインガイドをパスした価値であることは間違いありません。

さて、カナダでのアルパインガイドへの道のりが厳しいものだということが、記事を書いてる私も改めて実感しました。大切なのはしっかりとした計画性と入念な準備(トレーニング)そして、純粋な山に対する情熱ではないでしょうか。しかし、厳しい道だからこそお客様に安全を提供出来ることに繋がることと、何より手つかずのカナダのアルパインエリアをガイドできること自体が本当に価値あることです。是非、そんな熱い気持ちを持った方は参考にしてみてください!

そして、日本からのピークハンターの方々。現在ヤムナスカの登頂系ツアーはまだまだ始まったばかりですが、私たちがカナダの山で得た感動を沢山の人々に感じて頂く、登頂ツアー造成により力を注いで行きたいと思います!どうぞご期待ください!


ヤムナスカ・ガイド堀口 慎太郎 (ほりぐち しんたろう)
ガイドプロフィールはこちらから。









by ymtours | 2018-11-03 01:20 | 「マウンテンガイド」への道 | Comments(0)