2018年 05月 24日 ( 1 )

マウンテン・センスの向上

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Ya Ha Tinda(ヤーハーティンダ)
ストーニー族の言葉で、’Littel prairie in the mountains'、「山にある小さな草原」。その名のとおり、カナディアンロッキーの東の端に位置するYa Ha Tindaには、その名前とは裏腹に、広大な草原地帯と低山帯が石灰岩の山々に囲まれている、非常に得意な地形を持つエリアが、手付かずのまま残っています。ここへ、ガイド仲間の植木 、新人の水野と私ヒロの3人で、シーズン前のトレーニングを兼ねて、道なき道(オフトレイル)を縦走して来ました。
全くといっていいほど人の気配を感じること無く、野性味のあふれたこのエリアには、グリズリーベアーが9頭、狼、クーガー、ビックホーンシープ、ムースやエルクなど多くの野生動物が生息する、まさにワイルドな場所です。

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今回は2泊3日で、目的はロッキーならではの美しい尾根歩きを楽しみ、ワイルドキャンプの利点と、注意点、またマウンテン・センスを磨く為に、ほぼオフトレイルで目的地を定め、ナビゲーションスキルや、コンパスワーク、ルートファインディングなどのブラッシュアップ、つまりヤムナスカ・ハイキングガイドとして基礎的要素を再確認することに重点を置きました。
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キャンモアから車で約3時間、途中から未舗装道路を進みます。

Ya Ha Tinda Ranch、ここ実はParks Canadaに所有され、運営されています。ここはカナダで唯一、連邦政府によって管理される労働馬の飼育、育成の放牧場となります。
カナダ西部の国立公園で活躍する馬達はここで冬を越え、夏になるとそれぞれの現場に出向き、国立公園の安全管理に務めています。そこが今回の縦走のスタート地点。
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ここを管理しているRickさんとJeanさんの好意で、彼らの駐車場に特別に駐車させてもらいました。「ヤムナスカのガイドトレーニングとして来たのですが、、」と事情を説明すると、「是非ともここに駐車してくれ」と快くゲートを開けてくれました、、。温かい人情に感謝です。2泊3日の荷物を背負い、いざ出発!

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出発してすぐに、2、3日前のものと思われる、グリズリーベアーの足跡を発見。
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オフトレイル・ハイキングスタイルで進みますので、道は'Game trail'、つまり獣道を巧く利用することにより、道無き道でもいかに快適に、効率的に目的地に着くかを試します。何気なく歩いているかと思われますが、実は良く見ると、獣道が無数にあります。ガイドとして、これを巧く利用できるようにならなければなりません。
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森林限界を越え始めます。視界が開け、自分の位置を明確に判断できる材料が多く見えてきました。さて、今、どこにいますか?
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これまでの歩行速度、高度計、地形、視界に広がる山やピーク、川や支流などを頼りに、現在地を判断していきます。そして、それが正しいのか、コンパスを利用し、更に確率を高めます。最終的には持参したGPSでその判断を精査していきます。これはもう反復作業しかないですね。なんども繰り返し行うことで、精度を上げていくしかありません。実際、このような晴天時はヒントが多すぎて(笑)いいのですが、悪天候の時にはどうするのかというシミュレーションも行いました。

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勿論、楽しむことも絶対に忘れてはいけません。ここの尾根歩き、世界でもトップクラスの美しさを楽しめます!
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ヤムナスカでは世界で一番美しい尾根歩き「エスプラナーデ」をご紹介させていただいております。ここにも負けるとも劣らない世界がありました!

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いいですね。
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一日目のキャンプ目的地に無事に到着。水場を確保し、テント設営。
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キッチン、トイレ、それぞれを皆で確認し、熊対策は万全に行います。本日はキャンプファイヤーに適した場所ではありませんでしたので、翌日へ持ち越し。

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翌朝も快晴、、、。最高ですね。
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誰もいない尾根を歩き、今日のキャンプ地へ向かっていきます。
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プレーリークロッカスが満開を迎えていました。町よりは遅い春を迎えていました。
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落石の危険性のあるガレ場での歩行、注意喚起、そしてハザード(危険要因・原因)の認識と回避方法とプランニング。常にお客様を案内していることを前提に、シミュレーションしていきます。
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景色が素晴らしく、周囲の景色にに気を取られてしまいますが、足元にも野生動物の活動が記録されています。
これは'Pika'ナキウサギの仕業で、お花を日干しし、巣へ持ち帰る作業の途中経過ですね。
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吸い込まれそうな青い空にため息が出ます。
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広い尾根を進んでいきます。
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こんなに視界が広いときでも、常に自分の位置を意識しながら進みます。ガイドとしては身に染込んだスキルとして必要です。
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本日のキャンプ地に到着。水場がすぐ隣、、、。
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もちろん管理されたキャンプ場ではありませんので、熊用のロッカーなどありません。この場合、ベアーハンガーを作成します。夜寝る際には、食料、食器、歯磨き粉など匂いの出ると思われるものは全てここに吊るし、熊対策を万全とします。
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枯木を集め、小河の真横でキャンプファイヤーを始めます。ワイルドキャンプの醍醐味ですね。しかし、火の扱いには十分な注意が必要です。また、事後のことを考慮した場所を設定する必要があります。ここは雪解けが激しいと思われる4月末、または大雨が降った際に増水し、水路となると判断できた為、自然に与えるインパクトを最小限に抑えるには最適とみなしました。星空を眺め、ただただ火の暖かさに感謝しながら、それぞれ寝袋に入ります。キャンプファイヤーの匂いのついた衣服と寝袋に入るときのなんともいえない優越感といったらたまりませんね。

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翌日もオフトレイルで駐車場を目指します。
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山火事で焼けた森は視界がとてもいいですが、倒木を巧く回避しながら、出来る限り蛇行を減らしていく能力も必要です。お客様には「歩きやすい」と思ってもらえるように、ガイドの頭の中は常に「プランニング」で溢れていなくていけないですね。お客様には気付かれないように、それでいて美しいラインを描けるように、日々訓練ですね。
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あえて視界の悪い森林の中に目的地を定め、ルートファインディング、ナビゲーションの技術の確認と向上を図ります。本当に、ここが目的地ですか?
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春先の雪解けの時期にしか出来ない水溜りもあります。地図には載っていないのに「あれ?これだっけ?」と自問自答。とても良い勉強になりました。
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最後のホーストレイルを発見し、そのまま駐車場へ向かいます。
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最後は馬が私達を迎えてくれました。

素晴らしい山行となりました。シーズン前にガイド仲間とこのような機会でガイド技術の向上と、それぞれの意思確認ができるのは本当に素晴らしいことだと思います。また是非とも訪れたいYa Ha Tinda、まだまだ可能性を秘めていました。

このような雄大な景色と、尾根歩きを山小屋縦走という形で楽しめるのがエスプラナーデ山小屋縦走の旅だと思います。世界でもトップクラスのこの尾根歩きは、東にロッキー山脈、西にはコロンビア山脈と、その視界をさいぎるものが無い為、絶えず絶景を楽しめます。ほとんど人の入ることの無い大自然、手付かずの野性味あふれるエスプラナーデ縦走は絶対にお勧めです。

ご覧いただきありがとうございました!来月からシーズン突入ですが、安全を第一に皆様をご案内させていただきます。今シーズンもロッキーでお会いしましょう!

ガイド・篠崎洋昭

by ymtours | 2018-05-24 00:15 | 山旅の豆知識や魅力 | Comments(0)