第6回ガイドインタビュー(Jiro Kurihara)

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久々にガイドインタビュー第6弾を行います。今回は栗原治郎をインタビューしました。いろいろと面白い話を聞くことができました。

薫:
まずは自己紹介からお願いします。

治郎:
2007年からヤムナスカでハイキングガイドとして働き始めました、栗原治郎です。
1977年生まれの31歳。カナダに来たときは29歳だったのですが、いつの間ににかもう31になってます。時がたつのは早いものですね。

薫:
2007年からスタートしたんだ。既にもっといるような感じをするのは自分だけでしょうか?いつも冷静沈着なイメージからそう感じるのかな?

治郎:
中学生のころから、床屋に行く度に”大学生?”と言われていました。単純に老け気味、枯れ気味といわれることもありますが、基本的に根は何事にも冷静なほうかもしれませんね。あくまで表面的には、ですが…。

薫: 
なるほど面白いエピソードだね(笑)。。。
これも山の仕事ではとても有効な気質だと思うな。そのような治郎の「山との出会い」を聞かせてくれるかな?いつから始めたの?

治郎:
始めたのは大学4年の時です。山と出会う少し前から話しましょう。。。
自分は中学、高校、大学と部活動はほとんどしない、運動もほとんどしない、時間さえあれば本を読んでいる、ちょっと根暗な学生時代を過ごしていました。その間、山に目を向けたことはおそらくなかったと思います。

薫:
へー文化系だったんだ。それは驚きだね。

治郎:
大学4年のGWがすべての始まりでした。東京の方なら皆さんご存知の雲取山に行ったんですね。
目的は山頂ではなく麓にある三条の湯という温泉兼キャンプサイトでした。山のやの字も知らない友人と行って、「ついでだから上まで行ってみよう。」というわけで、快晴の中山頂へ行きました。つらいとかそういうことはなくて、ただ楽しかった。

薫:
初めての印象も良かったんだね。

治郎:
そして、何故か次の週にはバックパック、テント、炊事道具など出来る限りそろえて、今度は一人で雲取山に行ったんですよ。これから山をやっていく、という強い確信があったんですよね。

薫:
初めて登った山をきっかけにハマッてしまったようだね。もしこれが天候が悪かったりしたら今の治郎はないのかな??

治郎:
いや、そうは思いません。最初に強い印象を受けた、という感覚はないんですよ。不思議なことですけど。感覚的な言い方ですけど、それまで探していたものがそこに(町から山頂までの行程に)あった、というのが正しいかもしれない。

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薫:
直感的に宿命を感じたんだね。それは大きなターニングポイントになったんじゃない?
だって文化系だった人がいきなり道具を揃えてしまうんだから。戸惑い見たいのはなかったの?

治郎:
アウトドアギアって結構高価ですからね。でもあまり躊躇はなかったですね。だって山でこれがないと命に関わるものって色々あるじゃないですか。しかも、始めはまったく一人で試行錯誤しながらの登山だったから、とりあえず必要そうなものはどんどん買いました。正しいギア選択も登山のなかのひとつですから。その中には、すぐに使わなくなったものも沢山ありますけど。

薫:
そっかあ、はじめから山への危機管理というものも意識できたんだね。はじめはテント泊の縦走とかやってたの?

治郎:
はじめはテント泊の縦走を奥多摩でやり、次は大学の夏休みに入ったので、今で言うところの”ロードトリップ”に行きました。旅と山をいっぺんに楽しもうと思って。スクーターに荷物を全部載せて北アルプスをぐるぐると。ついでに能登半島の知人を訪ねたり、富山の友人宅に居候したり。疲れたら無料の温泉のそばにテントを張り、気が向いたらあっちこっちの山に登りました。山初心者だったからどこかで気負いはあったと思います。でも心底楽しみました。

薫:
冒険心がどんどん湧き上がってきた時期なのかな?

治郎:
もともと旅への憧れがあり、自転車で遠くへ行ったり、バイクで知らない所へいくのが好きだったんです。そこへ山を入れたらとても相性が良いことに気づいたんですね。。

薫:
俺も自転車から山へ移っていったので何だか近い感じがします。体力もどんどんついてきた頃時じゃない?

治郎:
もともと体育会系じゃないので、登り始めるとどんどん体力がついてきて面白かった。自分の知らない一面を見つけた気がしました。「お、わりといけるじゃん」って感じでしたね。アルパインクライミングにも興味が出てきて、これには仲間が必要ですから、都内の山岳会に入会しました。そこでトラッドクライミングを真剣にやっている師匠にあったのは大きかったですね。

薫:
へー、ますますアルピニストの道へ躍進していったんだ。海外でも登ったりしたことも聞いたことがあるけど。

治郎:
都内の山岳会に入って一年経つ頃、仕事を辞めてフランスのシャモニーへ行きました。モンブランとシャモニ針峰、グランドジョラスの麓ですね。

薫:
アルピニストの聖地といっても過言ではないところだね。どうだった実際に訪れてみて?

第6回ガイドインタビュー(Jiro Kurihara)_d0112928_9265390.jpg治郎:
日本の山や壁もまだあまり知らなかったから、日本と比べて、という感想はあまりありませんでした。でもやはり氷河があって、壁が大きくて、夏でも氷があって、というのは新鮮でした。モンブランでは初めて富士山より高いところに登ったので、ちょっと頭がふらふらするのすら楽しかったですね。

薫:
話少し戻るけど、スポーツクライミングはどのように知っていったの?なかなかその当時知られていなかったんじゃない?

治郎:
まずは近所の公園にある人口ボルダーから始まり、スポーツ会館のウォールでしょうか。あと一人のときは、五日市の岩場に行って、裏から登りトップロープを掛けて練習してました。今思うと怖いですね。何も知らなかったから。

薫:
ロッキーを含めて海外登山は他にはどこへ?

治郎:
あとはアメリカの岩場(ヨセミテ、ユタ、レッドロックス)です。岩登りばかりです。。
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薫:
そして今はこうしてロッキーに移り住んでいるけどロッキーの魅力はどこにあったのかな?

治郎:
ガイドになる前にしばらくロッキーでバックパッキングをしていました。その時は秋で景色もいい頃なのに歩いていると全然人に会わないんです。キャンプサイトでは他にキャンパーがいるのに歩いているときはまったくの一人。ピークを登りきってもやはり一人。ハイウェイからすぐに行けるところには沢山人がいました。でも少し奥地に足を伸ばすと、そこには自分ひとりで自然と向き合える余地がありました。この余地がとても心地よいです。

薫:
ホント同感だよ。一人ひとりの空間があるよね。その分自然と向き合える空間も得られるような感覚わかるな~

治郎:
あと、そんな場所には熊がいて、ムースがいて、狼がいる。そして自分がそこに踏み込む。フロントカントリーとバックカントリーという分け方をしますが、この界隈ではその境界をまたぐのが本当に簡単。町やハイウェイを離れればすぐにバックカントリーが待っている。そのある種の"便利さ"は山遊び人の自分にはとてもありがたいものです。ここに住もうと思ったのもそんな便利な土地を自分のホームベースにしたいと思ったからです。
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▲学生時代は美術大学で写真を専攻していた栗原は写真では一目置かれる存在である

薫:
自分の居場所を見つけたような発見だね。

治郎:
そうですね。キャンモアは、町をあるけばクライマーに当たる、というぐらいですから。ちょっと言い過ぎかな。

薫:
今年も大活躍の治郎だったけど。。。今年の大イベントの一つにアシスタントロックガイド合格があげられるんじゃない?
本当におめでとう!日本人としては初の快挙だよね!

治郎:
ありがとうございます。こちらに来てから考えていた目標を一つ達成できました。ただこれはACMGのガイドとしてただの入り口に過ぎないので、これからもさらに上の資格を目指していこうと思ってます。日本人として初めて、というのは大層聞こえがいいですが、たまたまいなかった、ということもありますから。

薫:
今回のでハイキングガイドとロッククライミングガイドと幅が広がったことになるけど、ガイドの魅力を聞かせてください。

治郎:
お客様との出会いがやっていて一番楽しいことです。山はいつも違う表情をみせてくれますが、お客様と自分の組み合わせもそれ以上に千差万別ですからね。余暇を楽しむことは人生の一部分ですが、そこには仕事には持ち込まない”本音”があります。そのお客様の”本音”の部分と関係を結べるのは、他の仕事にはないこのガイドという仕事の特徴だと思っています。しばらく共に山を歩き、食事をし、時間を過ごすうちに最初の印象ががらりと変ったりもしますからね。上手く言えませんが、素晴らしいことだと思います。

薫:
もっと色々な話を聞きたいとこだけど、、、
それでは今後やってみたい事や目標などはあるかな?

第6回ガイドインタビュー(Jiro Kurihara)_d0112928_9171880.jpg治郎:
今年は新たなガイド資格に挑戦して無事アシスタント・ロック・ガイドという資格を取得しました。自分が今まで精力を傾けて来たロッククライミング、アルパインクライミングをガイドのレベルに高めてゆく、最初の一歩を踏み出すことができました。今後はさらに資格レベルを上げ、アシスタントアルパインガイド、そしてフル・アルパインガイド資格を目指していきたいと思っています。同時に自分のクライミングを通してアルパインクライミング的カナディアンロッキーを発信していけたら、と思っています。

薫:
いやー楽しみだね。現実問題、時間もお金もかかる目標だけど今回の合格を弾みに一歩一歩がんばってね。
それでは、最後にロッキーに訪れようと思っている方にメッセージをどうぞ!

治郎:
カナダという安全な国のカナディアンロッキーという妙に耳慣れた場所。綺麗な湖があって氷河があって…。そんなイメージばかりが先走るカナディアンロッキー。しかし、少しアプローチを変え、いつもよりもう少し遠くに歩いたり、いつもは登らない壁を登ると、ステレオタイプなイメージにはないワイルドさ、優しさ、神秘を分けてくれるのがカナディアンロッキーです。広く、深いカナディアンロッキーの魅力を味わいに是非一度お越しください。あと2009年夏からはロッククライミングのプログラムを発足させますので、ご興味のある方はぜひコンタクトを取ってくださいね。

薫:
治郎の益々の活躍を期待してるよ!
今日はインタビューに協力してくれてありがとう!

治郎:
ありがとうございました!

【関連ページ】
栗原治郎のガイド紹介ページ
ヤムナスカガイド一覧

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by ymtours | 2008-12-24 02:37 | その他


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