皆さんこんにちは、ヤムナスカ・ガイドの堀口です。 突然ですが、皆さんは山で熊に出会ったら、どのようなリアクションをすると想像をしますか?? 目の前に巨大なグリズリーベアが出たら、きっときっとこんな感じで驚きで驚き固まってしますのではないでしょうか? ガイドの私は山で何度も熊に遭遇していますが、慣れているつもりでもハラハラするものです。 先日、ガイドの篠崎と私堀口の2人で、2019年の最新のクマ対策と専門家の見解を学ぶ機会があったため、その内容を皆さんにシェアしたいと思います。 情報の蓄積により、今と昔では考え方が違うことは良くありますよね。カナダの山でのアクティビティではクマの安全対策が必須であり、クマに関する情報は常にアップデートしておくことが重要です。自分たちがかつて学んだ知識はすでに古くなり、実際の山行に活かすことが出来なければ意味がありません。 以前のヤムナスカ・ブログではクマの生態などの基礎知識を紹介しました。 詳しくはこちら↓↓ 今回はより実践的な内容です。カナダの山でクマに出会わないようにするテクニックや、万が一クマに出会ってしまった場合の対処法などを以下の内容に沿って紹介したいと思います。 1.山でクマと出会わない為には? 2.クマは本当に怖い動物なのか?人を襲うのか? 3.万が一熊に出会ってしまったら?死んだフリは本当に有効なのか? 4.ベアスプレーの使用方法とは? 5.カナダの山でキャンプする場合のクマ対策とは? 6.実際の山での準備と心構え それでは早速内容を見ていきましょう! 1.山でクマと出会わない為には? 「音」を出す。クマに自分たち人間がいることを知らせる。 まずはクマに出会わないことが一番!彼らの生息地に入ることを知らせることで遭遇事態を回避することです。では「音」とは一体どんなものが有効なんでしょうか? 「クマ鈴が有効!」と思った方は多いのではないでしょうか? 実は現在の研究ではクマ鈴は効果がないと言われているのです。 理由は鈴の音が自然界にある音の波長と近い為、クマにとっては不自然な音ではなく、人がいることを知らせるほどの十分な効果がないことがわかっています。 ではどんな「音」がよいのでしょうか? 一番有効であると言われているのが「人の声」です。 「人の声」の波長は自然界に存在しないため、クマは音の違和感を感じるために避けようとします。人数が多ければ多いほど「人の声」が多く重なるため、クマに遭遇する確率を下げることが出来ます。実際にカナディアンロッキーでは4名以上のパーティーでクマに襲われた被害は一度も起こっていません。ご存知の方もいるかもしれませんが、カナディアンロッキーで人気のハイキングエリアであるラーチバレーではクマの生息域に近いことが理由で、ハイカーに4名以上のグループで入山することを推奨(クマの生態によっては必須なることもある)しています。 1人や少人数の場合は?? なるべく1人や2人で山を歩くことは避けたほうが良いのですが、止むを得ない状況の場合は一人でも声を出す。現地のトレランやマウンテンバイクで走る人は「Yo Bear!!」と大声で叫びながら走っています。実際に私もこれをやって山でクマに遭遇したことは一度もありません。 なぜ「Yo Bear!!」なのかというと、ロッキーでは同じエリアに定住してるクマが多く、かつてから使われているこのフレーズ=人の声と学習し認識しているのです。2人程度の少人数の場合はなるべく会話を多くすることを心がけましょう。登山口で挨拶代わりに「Yo Bear!!」と叫んでみましょう! 2.クマとは獰猛な動物なのか? クマは本来、人を恐れる警戒心の強い動物。 実はクマは警戒心の強い動物として知られており、基本的に彼らから人に近づいて襲いかかり食べてしまおう!なんて気はありません。 むしろ人を恐れ、人の匂いや音などを遠くでキャッチし、彼らから近づき人前に姿を現すことはありません。 大切なことは刺激を与えないこと。 これはクマに関わらず全ての野生動物に同じく言えることです。人を襲ってしまうケースというのは、何らかの「刺激」を彼らに与えてしまっていることが多い様です。例えば「大きな声で叫ぶ」や「急激に走り出す」など彼らが驚いてしまう様な行動です。これらがクマにとって「刺激=ストレス」となって人を襲ってしまうことに繋がりかねません。 3.万が一熊に出会ってしまったら?死んだフリは本当に有効なのか? まずは、落ち着き立ち止まる。 「落ち着くなんて無理無理!」と思うかもしれません。でも考えてみて下さい。前述した通り彼らの聴覚と嗅覚は人よりもはるかに優れており、特に嗅覚は人の数万倍と言われています。したがってほとんどのケースは我々が気付く前に、彼らがこちら側に気付いているのです。従って、もし人を襲う気があるなら、とっくに襲ってきているのではないでしょうか? 山で出会ってしまうケースの多くは、クマがこちら側に気づいていない。もしくは、気づいているが気に留めていない状況です。なのでこちらから何かアクションを起こさない限り、すぐに襲いかかってくることは考えにくいのです。 ですので、まずは、 「落ち着き立ち止まる」 「ベアスプレー使用準備」 「すぐに逃げ出さない」 これを心がけて下さい。 ではここからは実際の対処法です。 クマがこちらに気づいているのか、それとも気づいていないのか?? この比較をしてみましょう。 それではさらにクマが近づいてきた場合の対処法です。 「落ち着き立ち止まる」 「ベアスプレー使用準備」 「すぐに逃げ出さない」 ここまでは上と一緒ですね。 さらに、 「クマの行動を監視し、クマが近づいている理由を判断する」 おっと、理由を判断って・・・。 実は、ここが最も重要であり難しい判断が求められる場面です。 理由というのはクマの状況が防御的か非防御的なのかを判断するという事です。 下記はアラスカのカトマイ国立公園でクマの遭遇したカップルが撮影した動画です。 クマが防御的、非防御的どちらの状態かわかりますか? 人と認識させるために話しかけ、道を譲ったことでクマをやり過ごすことに成功しました。 この夫婦はクマの事をよく理解していることがわかります。それでもとても怖かったようですが、よく冷静に対応できましたね! この様にクマの状況(防衛的、非防衛的)により彼らの行動パターンが変化してくるため、対処法も変えなくてはいけません。 また意外かもしれませんが、「死んだフリ」というのは都市伝説でも何でもなく、状況によっては有効な防衛手段です。しかし、あくまでも最後の手段なのでここまでの状況にならない様に必ずベアスプレーを持参しましょう。 4.ベアスプレーの使用方法とは? さあ、ここまで読んでいただいた方にはベアスプレーがどれほど重要なアイテムか分かってもらえたと思います。 ここでは実践編になりますが、スプレーの使用方法を解説しておきましょう。 その前にそもそもベアスプレーとは何か? クマ撃退用のスプレーでありその主成分は、カプサイシンという非常に刺激が強い唐辛子エキスを濃縮したものです。 北米のアウトドアショップで購入するには名前や住所などの登録が必要となり、非殺傷武器となる為飛行機などの機体に持ち込むことは不可能です。 車に乗せる場合もバックパックの中に入れるなどして、誤射してしまわない様十分取り扱いには注意しましょう。 それではまずはパークス・カナダ(カナダ国立公園局)のベアスプレー使用方法のビデオをご覧下さい。 どうでしょうか? 使用方法はとても簡単ですが、武器にもなりえるためにスプレーの事をしっかり理解する必要があります。 いくつか重要事項がある為説明しましょう。 ・使用期限がある。(通常は3年) 期限を過ぎると正常に噴射されない、プラスチックが劣化し噴射できない等のトラブルがあるので注意。 ・山行中はいつでも取り出せる場所に身につける。 バッグの中に入れて歩くのは論外! ホルスターに入れてベルトにつけるのがベストです。 ・射程距離は約5m。 動画でもわかったと思いますが、あまり飛びません・・・。5mというのはかなり近い為、距離を考えてもやはり最終手段という事がわかります。 また自分が風向きに入らない様にし、強風時はより至近距離に入る必要があるでしょう。 ・万が一誤射してしまい、目や鼻に入ってしまったら? すぐに洗浄し救急車を呼ぶか病院へ直行しましょう。もし手元に牛乳などがあれば中和し痛みを和らげることも出来るでしょう。 スプレーのサイズについて ベアスプレーのサイズも以前に比べ大きくなってきており、以前の225gのものから現在では325gがスタンダードのサイズとなってきています。 スプレーをクマに使用する場合は最低8秒間噴射する必要があると言われており、225gサイズではその一回で使い切ります。 また、最新のスプレー使用ガイダンスでは、 最初に2秒間噴射 その後8秒間噴射 と2回に分けて噴射することが推奨されているため、325gサイズが普及してきています。 スプレーは使い方を誤ると事故になりかねません。持っていることで安心するのではなく、正しい使い方をしっかりと身に着けることが重要です。 また、一本$30~$50程とそこまで高価なものではないですが、カナダで購入しても日本には持ち帰る事が出来ないので注意しましょう。 5.カナダの山でキャンプする場合のクマ対策とは? 匂いのするものは全てクマの手の届かないところへ。 もっとも重要なことは食べ物の後始末。 テーブルや椅子に置きっ放しにしないことは当然ですが、テント内に持ち込むことも厳禁です。またサイト内に食べこぼしなどがないかもチェックしてから就寝しましょう。 焚き火に入れて燃やすのは良いのか? 完全に燃えきらず、残ってしまう事がある為良いとは言えません。ファイヤーピット(焚き火台)を荒らすクマの目撃情報も確認されています。残飯はゴミ袋に入れて必ず専用のゴミ箱に入れるか、車にしまう必要があります。 専用キャンプ場、バックカントリーでのキャンプの場合 残りの食べ物は専用のフードロッカーかベアバンガーで管理する。 キャンプ場がないバックカントリーキャンプの場合 テント、調理場、食事場、保管場所と一定の距離を保ち、食料が入ったバッグはロープで吊るす技術が必要となります。 とにかくクマの手の届かない場所へしまう事、歯磨き粉など匂いのするものもテントではなく食べ物と一緒の管理する様にしましょう。 クマを守るためにマナーを守る クマは学習能力の高い動物です。一度人の食べ物を覚えてしまうと再度食べ物を狙い、人間を攻撃し食べ物を獲得しようとする可能性があります。万が一クマが人を攻撃した場合、再び人を襲うことが考えれるため、残念ながらそのクマは処分されるでしょう。この様に人のマナーの悪さが結果的にクマを殺してしまうことに繋がるのです。クマさんの為にも食べ物の管理はしっかりと行いましょう。 6.ドライブ中クマに遭遇したら 安全に停車できる見通しの良い場所である事 車から絶対に降りず、車内から観察する 渋滞してきたら速やかに立ち去る カナディアンロッキーではこの様な光景は珍しくありません。季節や時期にもよりますが、ロッキーへ遊びに来た方でバスや車の中からクマを見た人は意外と多いのではないでしょうか。そして、そのクマ見たさに多くの車が止まり渋滞となるケースもあります。なかなか他の国では見られるものではないですし、嬉しくて停まって観察したい気持ちはよくわかります。 しかし、クマがどの様な行動に出るかわからない状況で、車から降りて近づき写真を撮るという行為は極めて危険です。クマが突然走りかかってきたりするかもしれません。また、ロッキーの場合はハイウェイ沿いの道路脇に出てくることも多いのですが、そもそもハイウェイの路肩に停車する事自体が危険です。ましてや車から降りて道路上をウロウロするのは自殺行為といっても過言ではないのでは? なぜ道路脇でクマを見かけることが多いのか? ・道路脇は日当たりが良い場所が多く、餌になる草花が多い ・障害物がない為移動しやすい ・道路脇は谷底になっていることが多く雪が少なく移動しやすい などがこれまでの見解でした。 最近分かった新事実: 子連れの母親クマはオスからの子クマへの襲撃を避ける為、人の気配のする場所を敢えて選択し子クマの安全を確保しながら餌を食べている。 という事が最新の研究でわかっています。 公園のルールやマナーをしっかりと守り、安全に配慮しましょう。 さあ、ここまでクマに遭遇したケースついて説明しましたが、それでもクマってやっぱり怖いなと思うかもしれません。しかし、彼らの事をよく知り、対策を学ぶことで事で安全に山で遊ぶ事も出来ます。ベア・カントリーと呼ばれるの領域をリスペクトする気持ちが、クマと向き合い共存する方法ではないでしょうか。 またベアスプレーの使用法や、遭遇時の対処法などクマの事を知れば知るほど不安になる人もいるかもしれません。 クマの生態に精通したガイドに案内してもらうのがベスト!という方は、いつでもヤムナスカガイドにお任せください!! 最新の知識と適切な対応をすることが私達プロのガイドの役割です。
by ymtours
| 2019-11-06 07:02
| 山旅の豆知識や魅力
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