導かれて…Mt.アシニボイン(3618m)登頂

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ヤムナスカガイド谷です。
今回はロッキー15回目の森さんのアシニボイン登頂をガイドさせていただきました。
北米のマッターホルンと称されるアシニボイン。世界中の登山者を魅了し続けています。
そして難度で言えば本家と比べても難しいと言っても過言ではありません。
雪がつく難しいコンディションの中、果たして登れたのでしょうか?

この先の文章は森さんご自身が自分の思いを書き綴ってくれました。
人生の目標として、そしてカナダに13年通われている一つの区切りとして選んだ山です。
ガイド目線ではなく、お客さん目線のアシニボインどうぞご覧ください。

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*** 森 亜希子(もり あきこ)さんからいただいたコメント ***

余裕もなく必死で登り続けていたけれど、ふと振り返ったその先には
目線と同じ高さの雲と小さく見える湖、それを囲む無数の山々、それはそれは素晴らしい眺めが広がってました。

ハイキング、バックパッキング、キャンプ、山登り、アルパインクライミング…
カナディアンロッキーでの山の楽しみ方は選択肢が無数にあります。
そんな中で、ゲストが100 人いればそれぞれ100 通りの物語がある。

今回憧れだったMt.アシニボイン挑戦という私の物語を、ゲスト側から見た景色、想いを
書かせていただきたいと、この場をお借りしました。

ちょうど今から20 年前、学生だった私はあるテレビ番組の海外トレッキング紀行にくぎ付けになっていました。
画面に映っていた山こそMt.アシニボイン。

特徴あるその姿に一瞬で魅せられ、そこからカナディアンロッキーに完全にはまっていくことになります。
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想いを寄せるカナディアンロッキーを初めて訪れたのは2007 年の夏。
モレーンレイクから始まるトレイル「ラーチバレー」のハイキングで、
うそみたいな青色をしたモレーンレイク、氷河を抱いたテンピークスに衝撃を受けました。

「もう、ここしかない。」なにがここなのか、なんでそう思うのかも理由はわからないけれど、
それ以来13 年間毎年カナディアンロッキーを訪れています。

通い始めのころは日帰りハイキング。
いつしかそれがもっと山を感じたいとバックパッキングになり、
ロッキーの5 大バックパッキングを完歩しました。

その中のひとつである2011 年の夏のバックパッキングで
ついにロッキーが好きになったきっかけの山、Mt.アシニボインに初対面。
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この時の感動は今でも鮮明に覚えています。
カナダのマッターホルンと呼ばれるMt.アシニボイン。

実際はテレビで観たより何倍もカッコよく、さらに惹きつけられる山でした。
ただ、少なくともこの時は、登りたいなんてまったく思ってなかったのですが…(笑)

幸運にもいろんな形でいろんな角度からひたすらロッキーを見続けてきた私だからこそ
いつのまにか登頂系の登山へと気持ちが向かっていったのは自然なことかもしれません。
「あのハイウェイから見える山の頂からはいったいどんな景色が見えるんだろ。」
はじまりはただ単純なこの思いからでした。

長年訪れる中で、山岳登攀ガイドである谷さんと出会い、
山の中で聞くロッキーの山の素晴らしさ、楽しさに、
まずはMt.ランドルに登ってみたいなと思い始めました。

そして、2015 年の夏に挑戦。
ロッキーを訪れる誰もが一度は見る山、標高差約1600 mもある山です。
とにかく楽しい山行でした。
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Mt.ランドルをきっかけに、2016 年 Mt.テンプル
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2017 年 スリーシスターズのビッグシスター
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2018 年 Mt.カスケード
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そして、テンピークスのMt.リトル&ボウレン
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日本でクライミングもしたことなかった私が、
2016 年からはロッキーでだけアルパインクライミングも。

このころから、いくつもの山を登頂する中でMt.アシニボインへ登ってみたいという
気持ちが表れ始めた気がします。そう、導かれるように…

登頂系の登山を始めて5 年目の今年、ついにMt.アシニボインへ挑戦しようと決めました。

挑戦にあたり谷さんから「アシニボインへの10 ヶ条」を受け取り、
挑戦までの1 年間は10 ヶ条をひとつひとつこなそうと頑張りましたが、実際はなかなかこなせず。

とうとう日本でもクライミングジムや山岳連盟の講習会に参加したり。
そんな中でも何ヶ条かこなせたものが、実際の山行に生き、力になったと今は実感しています。

いよいよ挑戦の4 日間スタート。
1 日目。ヘリを使い、アシニボインロッジに着いたころには土砂降りの雨。
初日の目的地ハインドハットまでもアルパインクライミングなので不安いっぱいの中スタート。
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でも、岩場に取りつくころには雨があがり、アシニボインもレイクメイゴックも姿を現しました。
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ハインドハットも憧れの場所。
正直、アシニボイン挑戦よりハットに辿り着けるかの方をこの時は心配してました。
不安をかき消すように、徐々に調子も上がり、ついに到着。
着いたすぐからまた降り出す雨。今回は本当にいろんな場面で天気が味方してくれた気がします。
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アシニボインがこんなに近くに。
2 日目。もともと天候が崩れる予報だったこの日。
昨日の段階からアタック日を3 日目と決め、この日は停滞日に。
日中はほぼ雨が降り続け時折強い風も。ちょっと別の山へ…という選択肢がなかったことが、
逆に完全にカラダを休められたので、この時からいい方向へ向かっていたのかなと。
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レジスターを読んで登頂のイメージをしたり、昼寝したり、ヨガしたり、、、
のんびりと1 日を過ごしました。

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夕食はゲン担ぎでチキン「勝つ!」の玉子とじ丼。
アマノフーズさんのドライフードのクオリティにびっくり。


夜遅くまで降り続く雨が少し気がかりでしたが、十分な睡眠を取れた夜でした。
3 日目。いよいよアタックの日。
雨はあがりAM3:55 にハインドハットを出発。
ここからが長い長い1 日のはじまりとなりました。
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ヘッドランプの光を頼りに数時間登り、ついに夜明け。
そして、目の当たりにするアシニボインの全貌。
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とにかく必至に集中し登る。
途中から心配していた雪面が表れ始め、やはりアイゼンやアックスも必要に。

これ、本当に自分が登ってるんだ…と信じられない場面も数多く。
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このころから気になりだすのはやはり下山のことでした。
登った分と同じだけ下山も時間のかかる難しい山。

気になって、気になって。。。そんな中、ついに頂上稜線まで。
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そして、ついに、11:15 AM、 Mt.アシニボイン登頂!!
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途中雪に降られる場面もありながら、登頂時は晴れ間がのぞく。
多くの雪で覆われた頂上は頂上を示すものは何もないけれど、
ここが確かにアシニボインの頂きなんだ。と興奮を抑えるように

少しの間、じっくりかみしめました。
そして、この瞬間から私にとっては正直厳しい下山の始まりとなりました。
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もう一度気を引き締め直し、下山開始。
今思うと、信じられない懸垂下降、ダウンクライムの連続。
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PM6:20 ハット到着で長い長い1 日がやっと終わる。
無事ハットに到着した直後はベンチにもたれ、放心状態だった気がします。
下山までが登山。じわじわとこみあげる、登頂し戻れた喜びと安堵感に包まれてました。
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4 日目。昨日の高揚感をまだまだ感じながらアシニボインロッジまで下山。
ここで怪我してはいけないと、気を引き締めながらも
時折こみあげる喜びににんまりしながら歩く。
岩場を終えてからのハイキングトレイルはたくさんのお花で優しく迎えてくれてるよう。
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アシニボインロッジに着き、しばらく眺めるアシニボインの姿。
昨日あの頂に自分が立った実感はやはりまだ少なくて、
でもロッジ滞在の方々に「Congratulations!!」と声をかけてもらう度に、
現実なんだなと嬉しくなったり。贅沢な数時間をヘリが来るまで過ごしました。
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今回印象深かったのは「山は逃げるよ」という言葉。
山は逃げないとよく言うけれど、実際はその時の自身のコンディション、
体力、モチベーション、周りの環境、すべてに影響される山行。
いつでも挑戦できるわけではなく。

だからこそ今回挑戦できたことは、やはり今が「その時」だったんだなと思えます。
自分の実力不足も、多くの課題が見えたことも、すべて含めていい経験となりました。
なにより憧れのアシニボインとあんなに共に過ごせたこと。

自分の今後の人生の中できっと大きな意味を持ってくる。そう思います。
アルパインガイド谷さんには大きな大きな夢に力を貸していただき、
ヤムナスカの皆さんには長年いろいろとサポートしていただき、本当にありがとうございました。
感謝の気持ちでいっぱいです。

2019 年の夏もそろそろ終盤。
今は憧れの山に登れたことを日々かみしめながら、やはりまた次のロッキーを夢見ながら過ごそうと思います…

*** 森 亜希子(もり あきこ) ***
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さていかがでしたか?夢に向かって邁進することは簡単なことではありません。
ですが、森さんが特別な人でもありません。
カナダでしかクライミングしませんし(年一回)特別体力があるマラソンなどしている方でもありません。
少しずつの努力が確実に頂に近づけてくれる。僕は登山の原点を垣間見た気がします。
もしあなたに登りたい山があって、そこにいきたいのでしたらぜひ私たちに声をかけてください。
全力でサポートさせていただいます。
森さんアシニボイン登頂、おめでとうございます!!


ヤムナスカ・ガイド谷 剛士 (たに たけし)
ガイドプロフィールはこちらから


by ymtours | 2019-08-11 02:42 | 登頂 / クライミング


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