こんにちは!ヤムナスカガイドのトシです。 カナディアンロッキーは素晴らしい初夏が訪れています。 キャンモアのあるフロントレンジは1900m付近まで雪はありません。 これならマルチピッチの岩ルートを登れるな。。。 後ろのランドル山の岩を見て下さい。いい感じでしょ。 でも、今週は金曜から3日間も救急法の更新があるのです。 我々ヤムナスカガイドは80時間のウィルダネスファーストエイドの資格を持っているのですが、、 3年に一度、この資格を更新しなくてはなりません。しかも英語で。。。つらー。。 「たいへんだなー、めんどうくさいなー、、またお金がかかるな。。。」 こんなことを言うとプロっぽくありませんが、こんな気持ちになるのが正直なところなんです。。。。 始まってみると、3年の間に忘れていることを気がつきます。 本来ガイドはお客様を安全にご案内し、怪我をさせないことが仕事になります。 僕はこの3年間の間に救急の応急処置をやってませんので、良いガイドと言えます。笑 自慢ではありませんが、この3年間で行った応急処置は、靴擦れで剥けた皮膚にダクトテープを貼ったぐらいです。 青いTシャツを着たインストラクターのデイブは、次から次へとシナリオを作ります。 面白いことに沢山のシナリオをこなすと、3年前に学んだことを思い出し始めます。 止血帯法のTourniquetは、これまで直接圧迫止血法や関節圧迫止血法でも出血を止められない時に、最後の手段として使うと学んできました。今回の講習では、太い動脈を損傷するような怪我で、血液が勢いよく噴出するような出血の場合は、止血帯法を先に使って出血を止め、それから直接圧迫止血法を使って出血をコントロールできるか試すように教えられました。そして、必要あれば後で止血帯法を外すと言う順序を新たに学びました。戦場で負傷した兵士の処置から学んだ考え方だそうです。現在、アメリカの空港では爆破テロ対策のために、AEDの横に止血用のキットが置いてあるそうです。その中に止血帯法に使うTourniquetが入っているとか。。。 手や足が切断されるような大怪我の場合に止血帯法を使うのはイメージができます。切断ではなく深い傷のとき、動脈の切断により出血がひどい場合も出血帯法を最初から使えと教えられました。出血を最小限で止めることが、生命を維持するために最優先であるという考えです。もちろん、出血帯法を使った場所の先にある組織は損傷することになるけど、最近の医学では6時間以内に病院へ運べれば、組織は蘇生できる可能性があると言うことです。ちょっと安心しました。 まあ、とにかく目から鱗ですね。。 胸部外傷の処置についても新しいことを学びました。 昔は胸部に刺し傷がある場合は、空気を通さない素材を四角に切って3箇所だけをテープで貼り、刺し傷をカバーしろと教わりました。いわゆる空気が刺し傷から入り込まないようにするためです。1箇所テープを付けないのは胸内の気圧が高くなった時に、自然に圧が抜けるようにするためでした。実際この機能がうまく働かず、圧が高くなり患者の危険が増すことが多いことが判明したそうです。もちろん、レスキュー隊員が胸内の圧を随時観察できれば良いのですが、特にウィルダネス(医療機関から離れた場所)現場では不可能だという考えになったそうです。今年の講習では、胸部に刺し傷がある場合は通常のガーゼで処置し、ガーゼが汚れるたびに交換する処置が、現場のリーダー(ガイド)のためには適切だと学びました。 さらに酸素吸入の考え方にも大きな変更がありました。 昔のファーストエイドでは、患者にとって酸素を与えられることは良いことばかりで悪いことは無いと考え、とにかく呼吸器系に問題がある場合はハイフローのO2を与えると学んできました。今年からは血中酸素が94%以上ある患者には、例え呼吸器系に問題があっても与えてはならないと教えられました。体内の酸素は多すぎても副作用を起こす患者がいるとのことです。もっと良い説明ができればと思いますが、僕のレベルではこれほどの理解において酸素吸入の新しい投与法を覚えておこうかと思います。血中酸素を測るにはパルスオキシメーターが必要です。小型化によって高所登山にもよく使われてます。正確に言うと、動脈血の酸素飽和度(SPO2)を測る装置で、実は日本光学電工業株式会社の青柳卓雄氏と岸道男氏によって1974年に発明されたものと言うことです。(byウィキペディア) 3日間の講習の最後に4択の筆記試験(70問)があります。 なんとか今回も合格できました! これで夏のガイドに向けて準備が整いました。 皆様とお会いできることを楽しみにしています。 ヤムナスカではロッキーマウンテンアドベンチャーメディシンというウィルダネス救急法を教える団体の講習会を開いています。今回のインストラクターであったデイブ・ワットは非常に現場経験が豊かで、プラクティカルな教え方は定評があります。資格試験だからといって杓子定規に採点するような団体も過去に体験したことがありますが、僕はより実践的なデイブの教え方が良いと思ってます。山の中では通常の救急法は使い物になりません。さまざまなシチュエーションがある中で、我々ガイドがベストと思う行動をとる。そこに難しさがあると思います。 これからも事故が起きないガイディングを目指したいと思います。 これに尽きますね。 山田 利行(ヤマダ トシユキ) プロフィールは以下のページからご覧ください。 http://www.ymtours.com/guides/guide-yamada.html
by ymtours
| 2017-06-06 06:04
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