カナディアンロッキーに生息するクマを知ろう!

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皆さんこんにちは。ヤムナスカガイドの植木です。

皆さんは、カナディアンロッキーを代表する動物と聞くと、何を連想しますか?
いままで数多くの方をカナディアンロッキーにご案内してきましたが、
まず一番に名前が上がるのは、やはりなんといってもクマ(BEAR)ですね。
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カナダではこの写真のように、道路脇でクマに遭遇することも珍しくはありません。

そこで、今回はカナディアンロッキーに生息するクマの種類、生態、そして遭遇しないための、まめ知恵をご案内しましょう!

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 カナディアンロッキーには上の2種類のクマが生息しています。皆さんは違いは分かりますか? 上(1)が『グリズリーベア』、下(2)が『ブラックベア』でして、カナダ全土で生息する個体数は、ブラックベアの方が多いです。


 それではまず、ブラックベアーからご紹介しますね。

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ブラックベア
American black bear/クマ科クマ属アメリカグマ

 体長140㎝~180㎝、体重250前後、大型になると約400㎏とかなり大きいですね。生息地域は、北はアラスカからカナダ全域の森林地帯、南はメキシコまでと非常に広範囲です。北アメリカには、およそ60万頭、そのうちカナダには38万頭以上が生息していると言われています。カナディアンロッキーの4つの国立公園に生息する個体数を見ていましょう。バンフ(20~40頭)、ジャスパー(約90頭)、ヨーホー(20~50頭)、クートニー(30~50頭)。合計で約200頭前後の生息が確認されています。

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 3~4歳になると出産ができるようになり、おおよそ2年に一回、2頭前後の出産を行います。ブラックベアは雑食ですが、主に植物の根、草、実を好むことが多く、獲物を捕まえて食べることはほとんどしません。一年の食事で、およそ85%は植物が占めているそうです。

  ちなみに、「クマを見たら木に登れ!!」ということを聞いたことありませんか?

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 実はブラックベアは木登りが得意です。爪が短く、しっかりと幹を捕まえてひっかけられるような形になっているのです。ブラックベアを見かけたら木の上に逃げるは止めましょう(笑)

 一方、グリズリーベアはを見てみましょう。

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グリズリーベア
Grizzly bear/クマ科クマ属ヒグマ亜種ハイイログマ

 最大級の個体は体重が450kg以上に達し、ブラックベアより大型となります。生息範囲はアラスカの一部、カナダ東部、南はメキシコ中部までとブラックベアと生息域は似ています。しかし、生息数が圧倒的に違います。アルバータ州には約690頭、カナダ全域には2万頭ぐらいしか生息していないそうです。カナディアンロッキーの4つの国立公園内には、バンフ(約65頭)、ジャスパー(約109頭)、ヨーホー(11〜15頭)、クートニー(9〜16頭)の合計で約200頭前後の生息が確認されており、カナディアンロッキーだけを見ると、生息する個体数はブラックベアと同等であると言えますが、グリズリーは移動範囲が非常に広範囲のため、この数は常に変動しているそうです。

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 5~8歳で最初の出産期を迎え、カナディアンロッキーでは4、5年おきに2〜4頭前後の子を産みます。

 グリズリーも雑食であるため、主な食物はブラックベアと似ていますが、特に爪が長く、深く穴を掘ることが可能なため、地中深くにある球根、地リスなどもよく捕食しています。

 また、ブラックベアーと異なるのは、シカ、エルク、ムースなどの大型の動物も獲物として捕食している点で、それゆえにブラックベアーより凶暴な性格と考えられています。しかし、ブラックベアと同様、食物の85%は植物といわれており、それだけ山には多くの植物の食べ物があるということになりますね。

 トレイルでは熊の排せつ物(糞)も見かけますが、晩夏から秋口の排せつ物を見ると、こんな感じで真っ赤な色をしています。
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 特にグリズリーは、秋口になると冬眠のためにたくさんの木の実を食べ、いわゆる「過食症状態」になり、一日に20時間以上は食べ続けているという結果があるそうです。
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 ところで、クマがサケを食べているシーンは有名ですね。北海道でも昔はクマの彫り物といえば、サケを咥えている姿でした。カナダでも海沿いの河川にはたくさんのサケが遡上し、それを捕食するクマの姿がよく見かけることができます。

 しかし、カナディアンロッキーは海まで約1000㎞離れており、途中いくつもの高い山脈がそびえています。実際のところサケが遡上するエリアは少なく、残念ながらカナディアンロッキーでサケを捕まえている場面には遭遇しません。

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 さて、最後にクマと遭遇しないためのちょっとした知恵をご紹介しましょう。

 まず、クマは基本的に憶病です。それゆえ、基本的にクマも人間とは遭遇はしたくはないのです。熊の嗅覚は人間の数十万倍ともいわれているので、だいぶ遠くからでも人間のことには気づいています。そして、聴覚も鋭いので、音を立てているとクマの方から近づいてくることはありません。しかし、風向き、周辺の環境などでは、人間の方が先に発見することも珍しくはありません。そのために、いくつか代表的な「クマからのサイン」を知っておくと良いでしょう。

 熊が近くにいるサインとして、足跡がありますね。


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 この足跡はかなり新しい足跡であることが分ります。こうした足跡が自分たちの行く先に通じているとしたら、クマを警戒する必要があります。あくまでもクマの縄張りに自分たちがお邪魔しているということを忘れないで、共存することが大切です。

2つ目として、排せつ物です。

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 これは一つ例ですが、いつもこのような色や形をしているわけではありません。たまに熊と馬が似ているときがありますが、よく見ると葉の繊維だけではなく、木の実や動物の毛などが含まれています。

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 こんな感じの時もあるのですが、量が多いので明らかに小型の草食動物の物ではないことが分ります。消化されずに出てきているということは、かなりの量の実を食べているということですね。

 こうした排せつ物を発見した時、まだ乾燥していない、形がしっかりしているものは新しいと判断できます。排泄物があまりにもフレッシュな場合は、クマがかなり近くにいる可能性があります。速やかに退散して、クマの領域を侵さないようにしましょう。

 先にも書きましたが、実際にクマと遭遇しないためは、大きな音を出しながら歩くのが効果的です。

 なお、音といえば「クマ鈴」と言われていますが、実は鈴はあまり効果がないことが分っています。「クマが音に慣れた」という噂がありますが、鈴の波長は自然界にも近いものがあり、実際は効果がないという話や、人工的な音のそばにエサ(人間)がいると判断して近づいてくるなんて話もあります。

 では、何が良いのかというと、「人間の話し声」です。人間の話し声の波長は自然界には存在しないそうで、クマにとっては違和感があると言われています。「森のくまさん」でも歌いながら楽しいハイキングをしましょう。

 そして、クマ撃退用のベアスプレーも、万が一に遭遇した時のために絶対に必要です。もちろん、私たちガイドは常に携帯していますので、ガイドハイキングなら安心ですよ。

 熊をもし見かけたら、十二分に距離をとり、絶対に近づかないようにしてください。

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 これは、すごく危険です!!クマが本気で走り始めたら、絶対に逃げ切ることができません。

 最後に一つ。ガイドをしていると、たまにこういう質問をしてくる方がいます。

 「白熊ってロッキーで見れないんですか?」

 確かにカナダには白熊が生息しています。しかし、白熊はホッキョクグマともいうだけあって、北極圏だけに生息している動物で、残念ながらカナディアンロッキーにはいません。北極熊を見たい方は、ぜひ北極圏のツアーに行きましょうね。

 ちなみに、ブラックベアの変異したカーモードベア(スピリットベア)という種類もカナダには生息しています。劣性遺伝子を持つブラックベア同士が交配すると、白いブラックベアが生まれるといわれています。BC週には実際に2000頭ほど確認されていますが、これは白熊ではなく、ホッキョクグマとは別種ですのでお間違えなく。また、カナディアンロッキーではいまのところ正式には確認されていません。

 クマのことが少し分かっていただけましたでしょうか?
 カナディアンロッキーではクマは決して珍しい動物ではありません。

 幸いカナディアンロッキーでは、クマによる被害の報告はここ20年以上ありませんが、それでも動物園のクマを目の前で見ただけでも恐怖を感じるので、まずは遭遇を避けるのが第一、そしてその知識をもって山に入ると、より安全な登山を楽しむことができます。

 皆さんもクマには十分に気をつけてください。


ヤムナスカ・ガイド植木 正幸 (うえき まさゆき)
ガイドプロフィールはこちらから


by ymtours | 2018-07-13 03:05 | 山旅の豆知識や魅力


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